イオンとヨーカ堂の両雄激突 岡山と倉敷の流通地図はどう変わるか

全国18番目の政令指定都市・岡山と、年間約320万人が訪れる観光都市・倉敷。隣り合うこの両市でスーパー業界の両雄、イオンとイトーヨーカ堂の大型ショッピングセンター(SC)が直接対決を繰り広げようとしている。

 岡山市約70万人、倉敷市約48万人、これに周辺の総社市などを加えれば岡山・倉敷都市圏で150万人の人口を抱えるが、近代的な大型SCといえば、現状では1999年9月に倉敷市内のクラレ工場跡地に開業した「イオンモール倉敷」しかない。

 このため、総合スーパーを核店舗にさまざまな専門店や飲食店、映画館など約150のテナントを集積したイオンモール倉敷は、「土日になると4500台分の駐車場はいつも満杯で、ひとり勝ちの状況」(地元小売業関係者)となっている。推定年商390億円に達する、まさにドル箱店舗だ。

 そのイオンの牙城に、イトーヨーカ堂が三井不動産と手を携えて乗り込む。場所は倉敷駅北口駅前の倉敷チボリ公園跡地。イオンモール倉敷とは直線距離で2キロメートルと離れていない。

 全体で約10万平方メートルを超える広大な敷地に、ヨーカ堂は直営食品スーパーを核にベビー用品専門店や家電量販店、そして食品・飲食系のテナントを多く集めた「アリオ倉敷」を、三井不動産は内外のファッションブランドが在庫放出品を格安で販売する「三井アウトレットパーク倉敷」をそれぞれオープンさせる。

 開業日はアリオが11月25日、三井アウトレットパークが12月1日。混雑を予想して敢えて開業日をずらした。

 岡山県内の事情に詳しいアパレル系専門店幹部は、「岡山の人間はアウトレット好きが多く、兵庫県のアウトレットモールにまで足を伸ばしていた。地元にできればかなりの客が集まるのではないか」と予想する。

 中国地方で初の本格的なアウトレットモールだけに、三井不動産が想定する商圏はクルマで90分圏内の約335万人、年間来場者は500万人以上を見込む。

 ヨーカ堂側はアウトレット目当てで来場した客を飲食系テナントで取り込むと共に、足元商圏の日常生活ニーズを吸い上げていく。

 三井・ヨーカ堂の共同戦線に対抗するため、イオンモール倉敷は1万1000平方メートルの増床棟を新設、既存の商業棟も改装してテナント数を約1.5倍に増やして、10月28日に全館改装オープンする。

 果たして両者の戦いのゆくえはどうなるのか。前出の専門店幹部は「すでに地元にしっかり浸透しているイオンモールの優位は揺らがないのではないか」と見ている。

 ただ、岡山市方面からイオンモール倉敷に向かう国道は週末ともなると慢性的な渋滞で、その途中に三井・ヨーカ堂連合のSCが誕生する。やはり一定の客を奪われるのは避けられそうにない。

 年末商戦で両陣営がどれほどの集客力を見せるかが見物だ。

 倉敷駅と岡山駅は電車に乗ればわずか18分の距離。その岡山駅近くでイオンモールは先ごろ、4万6000平方メートルの土地を取得する契約を結んだ。糖質「トレハロース」や抗がん剤「インターフェロン」の生産で知られる地元大手企業、林原グループの所有地だが、会社更生手続き中の同社が資産整理のため売却を決めたものだ。

 イオンモールは2012年1月以降に土地の引き渡しを受け、早ければ13年中にも大型SCを開業する計画。

 倉敷とは攻守ところを変えて迎え撃つのはヨーカ堂。「イトーヨーカドー岡山店」がアミューズメント施設などを備えたSC「ジョイフルタウン岡山」の核店舗として出店しているのだ。

 ジョイフルタウンは岡山駅から南に約800メートルの場所にあるが、駅からの中間地点にイオンモールが取得する林原の土地がある。「イオンが新たなSCを作ったら、ヨーカ堂は大きな打撃を受けるだろう」というのが地元小売業関係者の見方だ。

 ヨーカドー岡山店はオーソドックスな総合スーパーで、「岡山市民にとっては別にめずらしくもない」。これまで週末になれば岡山市内からイオンモール倉敷までわざわざ出かけていたが、「岡山駅前にイオンモールができれば、地元では大歓迎されるだろう」というのだ。

 ただ、4万6000平方メートルという敷地面積はイオンモール倉敷の3分の1の規模で、大型SCを作るには十分ではない。さらにイオンモール側にとって悩ましいのは、岡山市がこの土地にコンベンションセンターを併設する意向を示していることだ。

 高谷茂男市長は、「(林原の土地は)岡山の玄関口ともいえる位置にあり」、売却先が決まり次第、「土地の一部にコンベンション施設を市が整備することを働きかけたい」と記者会見で言明している。

 市は第三セクター方式で岡山駅西口にもコンベンション施設を運営しているが、「閑古鳥が鳴いている状況」(地元関係者)。駅を挟んだ至近距離に新たなコンベンション施設を市費で作ることには地元でも疑問の声が多いが、SC開発においてさまざまな許認可権を持つ市の意向をイオンモールは無視することもできない。

 もともと広くない敷地であるうえに、コンベンション施設を抱え込まされたのでは、イオンモールとしては満足なSC開発ができず、頭の痛いところだろう。

 じつは、ヨーカ堂以上にイオンモールのSC開発に神経を尖らせている企業がある。地元百貨店の天満屋だ。天満屋岡山店がある表町は岡山駅から1キロメートル余り離れた繁華街だが、最近では商業地としての地盤沈下が著しい。

 天満屋と接する表町商店街にあった映画館はすべて閉鎖され、商店も歯抜けが目立つ。若者を中心として買い物客は、高島屋やファッションビル「ビブレ」などがある駅前に流れている。

 イオンモールのSC新設で駅前の商業集積度がさらに高まれば、地方百貨店の中では優良企業といわれる天満屋も存亡に関わるほどの深刻な打撃を受けかねない。

“地方百貨店キラー”として成長してきたイオンモール。同社の岡山駅前進出は、イオンvs.ヨーカ堂という構図と同時に、イオン対地方百貨店の雄という二重の意味で、その動向が注目される。

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